人工芝のゴムチップが必要な理由は?発がん性があるのは本当なのか?
野球場やサッカー場などの各種競技場で「人工芝」が敷設されることが多くなってきました。また、それ以外でも自宅用のインテリアとしての人工芝の利用も増えてきています。
人工芝のグランドでプレーをしたことがある方はご存じだと思いますが、人工芝のグランドには、黒い粒のようなものが撒かれています。今回は、その「黒い粒」がどのようなものなのかを解説していきたいと思います。
人工芝に撒かれているゴムチップの役割
競技場の人工芝に撒かれている黒い粒の正体は、「ゴムチップ」です。なぜ人工芝の上にゴムチップが撒かれているのでしょうか?
競技用の人工芝の特性は、とにかく競技者の安全性を重視したものになっています。野球やサッカー、ラグビーなどは激しいプレーや激しい接触が行われる可能性が大変高いスポーツです。
そこで重要になってくるのがパイル(葉の部分)になります。近年の人工芝は、排水性もよく、グランドレベルの気温上昇も防いでくれるものも出回っています。天然芝により近付ける技術は、どんどん上がってきています。
しかし、人工芝のパイルを天然芝と比較した場合、技術が進んできている今日でも、まだまだ固いと言わざるといえません。特に、競技場のグランドに立っている選手たちは、敏感に感じ取ります。
そこで、選手たちの膝や腰に負担の掛からないよう、クッション性を高めるために、人工芝と共に撒かれているのがゴムチップになります。
競技用の人工芝において、このゴムチップは安全性の理由から必要なものとなっているのです。
ゴムチップには発がん性の危険が疑われている
選手たちのフィジカル面を支えているゴムチップではありますが、そのゴムには「発がん性」があるのではないか?という疑いがあります。
ことの発端は、2014年にアメリカの女子サッカーチームの選手がガンを罹患したとNBCテレビが報道したことです。さらに、ガンに罹患した選手の38人中34人がゴールキーパーだったという記録があります。
近年、欧米では天然芝のグランドからロングパイル人工芝への移行が進んでいるため、ガン罹患の原因が人工芝に向けられてしまったのです。
実際に、ゴムチップの成分から高濃度の鉛が検出されましたが、アメリカの環境保護局(EPA)は、人工芝の発がん性について沈黙を貫いてしまったのでした。
鉛は、国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類の中で、発がんの疑いが高い物質となります。呼吸時や損傷した皮膚などから、鉛が体内に入ってしまう可能性はかなり高いのです。
目に見えない発がん性物質がグランドにあっては、安心してプレーをすることはできません。ゴムチップは、耕運機のようなもので人工芝いっぱいに撒かれます。グランド上にいる限りは、いつ体内に吸収されるかわかりません。
全体に撒かれたゴムチップだけを取り除けば良いのでは?と考えるのが一般的ですが、グランド全体にびっしりと撒かれたゴムチップのみを回収することは現実的に難しいのです。
それならば、人工芝を張り替えてはどうか?との意見も出たようです。
しかしながら、アメリカには約1万1000ヶ所の人工芝グランドがあります。
ひとつ入れ替えただけで100万ドル(約1億1000万円)かかる計算です。全ての人工芝を入れ替えるのには、途方もない時間と金額が必要なのです。
また、誤解のないようにしておかなければならないのは、人工芝自体に発がん性は認められず、人工芝に撒かれたゴムの素材に発がん性がある疑いがあるだけです。「人工芝=発がん性があり、危険」ではありません。
人工芝からゴムチップをなくすことは難しい
危険な要素があるゴムチップですが、そもそも本当に必要なのでしょうか?
先にも述べた通り、ゴムチップは衝撃を吸収するクッション材として使われています。ですから、ゴムチップをなくしてしまえば、ガンへのリスクはなくなるものの、膝や腰など身体的な故障の原因になる可能性は高くなります。
毎日のように激しい練習を行っている選手たちへの負担は大きなものとなりますので、既存のグランドに関しては、ゴムチップはやはり必要不可欠なものとなってしまいます。
必要不可欠なゴムチップですが、問題となっているのは、鉛やベンゼン、カーボンブラックといったような化学物質です。これらは古タイヤに含有されるもので、発がん性が疑われる物質となります。
しかし、全てのゴムチップにそのような物質の入った素材が使われているかというと、そんなことはありません。
エチレンプロピレンゴムなどの毒性が認められないゴムチップを使用している人工芝も存在します。しかし、値段の面からいえば古タイヤを使用しているチップと比べて、高価になります。
発がんの危険がある人工芝を入れ替えることは、先程のアメリカの事例と同じで、1億円という莫大な金額がネックとなり、なかなか進まないのが現実かもしれません。
また、駐車場やインテリアに使用される人工芝については、そもそもクッション性は必要ありません。ですので、ゴムチップに関しての危険性は考えなくても良いでしょう。安心してお使いください。
今、安心・安全な人工芝の敷設が求められています
クッション性を保つことは、フィジカル面でとても大切な要素です。また、それに加えて、目に見えない不安を取り除くことも大切です。人工芝には安心・安全が求められる時代となってきました。
人工芝を敷設する業者は、それこそたくさん存在します。業者選びをする中で、大切なことは、まず相談をしてみることです。さまざまな商品があるものの、実際にそこから安心・安全な商品を選ぶこと自体がとても難しいからです。
人工芝に関する技術は、近年とても高くなっています。水はけの良さ、屋外のグランドでも熱がこもらない、天然芝に近い商品はすでに開発されています。メンテナンスのしやすさというものは、ランニングコストの削減に大きく貢献します。
そのなかで、今回のような発がん性物質があっては元も子もなくなってしまいます。
とはいえ、発がん性物質を含んだゴムチップは30~40年前の古タイヤを使用していた頃の問題で、近年では鉛などの有害物質に対しての規制が厳しくなるなどゴムチップの材料となるタイヤの品質が向上しており、その不安も払しょくされています。
敷設業者も、扱う材質などについては知識をもっていますので、疑問や不安に思うことがあればしっかりと確認しておいたほうがいいでしょう。
価格、安全性、安全性のバランスがとれた人工芝を使用することが、今の時代には必要不可欠な要素となっています。
人工芝でプレーをする機会も多くなってきた時代、安全性の確認など全てを業者任せにするのではなく、安全のために自分たちの身は自分たちで守ることをベースに、対策と実践を行ってください
医療では「スタンダードプリコーション」という概念があります。感染症から身を守る予防策ですが、体に有害なものを体内に取り入れないことですから、人工芝を利用するみなさまにも当てはまります。
接触プレーなどで目に何か入ってしまった場合は、よく流水で目を洗い、医師に診察してもらいましょう。
また、損傷した皮膚からも体内に取り込まれますので、擦り傷や切り傷などのけがをした場合は、絆創膏を貼るなどの対策をしましょう。
長くなってしまいましたが、みなさんが安心して人工芝を利用できるように人工芝の安全性をご説明しました。
わたしたち業者も、ゴムチップは課題のひとつとなります。利用者が安心してお使いいただける人工芝のご提案をさせていただきます。
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